アメリカ研究子育てマンの観察日記

アメリカで研究と子育てに奔走する男の観察日記。独自の視点でアメリカを見つめ、日本を見つめ直す

日本人は子供を持つことに明るいイメージが持てているのだろうか?

昨今、待機児童問題やら何やらで日本の子育て環境が外国と比較されることが多いなと思います。そういう時、テレビのコメンテーターが『欧米ではこういう優れたシステムがある』なんて聞く事が多かったので、てっきりアメリカは子育て家族に手当が多いんだと思ってました。ドラマなんかでキビキビ働くキャリアウーマンをよく見ますし。

 

でも、渡米して知りました、、、欧はいいんだろうけど、米は酷い、、、と。まず、出産して1日、2日で病院から追い出されます。日本だと1週間、お風呂の入れ方や授乳の仕方などを丁寧に教えてもらえるみたいですね。いいな、、、難産だった奥さんが全然回復していないのに退院でした。きっと医療費が高いことと関連しているのでしょう。退院しても右も左もわからん!!!

更に、アメリカの保育園(向こうではデイ・ケアと呼ぶ)めちゃくちゃ高いです。子供の年齢にもよるみたいですが、月から金まで子供を預けたら1週間で350ドル程度(4万円近い)がとられるらしいです。子供が増えればその分だけ金額が増えるので、仕事を諦める女性も少なくないとのことです。保育料は税制優遇の対象らしいですが、それでもスズメの涙です。うちは奥さんは現在子育てに専念しているのですが、これから仕事したいとなった時に稼ぎの多くを持っていかれてしまいます。アメリカは想像以上に金が物を言う世界でした。

 

日本は自治体によりますが、毎月給付金を受け取れたり、医療費が減額されたりと、、、なんてサポートが充実しているんだ!

 

でもアメリカは日本に比べて明らかに子供多いです。街を歩いていても思います。出生率を見てもアメリカ:1.80 、日本:1.44

世界の合計特殊出生率ランキング - 世界経済のネタ帳

 

どうしてこんなに低福祉なのに、アメリカ人は子供を欲しいと思えるのでしょうか。移民が、教育水準がどうのこうのと言った難しい話はさておきまして、僕がミネソタに住んで受けた直感的な印象は、周囲の理解があってノビノビ育てられる環境があるということです。

 

僕らはアパート暮らしなのですが、子供が外でキャーキャーよく遊んでいます。こないだは、子供がストラックアウトみたいなのに向かって球を投げていたので、バシッ!バシッ!という音が響いていました。向かいの部屋の人は窓をいつも開けっ放しなので、子供が大声で泣いているのがよく聞こえてきます。その子は無限に泣くことができる能力の持ち主です。けれど、それらに対して苦情を言っているような人間は見たことがありません。みんな、子供はそういうもの、元気に遊んでいてよいと思っているのでしょう。公園も多いです。街のいたるところにあります。そしてでかいです。子供は走り回ったり、各々好きなことをやっています。楽しそうな子供を見ると大人も元気をもらえますね。

 

一方で、日本はどうでしょうか。親たちは苦情を言われないために日々ビクビクしています。最近は小学校でボールを蹴る音がうるさいとか、運動会にまで苦情をつける人がいるみたいですね。保育所もうるさいから立てるなと反対する人も多くいます。地域の子供達を暖かい目で見守ることを忘れ、自分さえ良ければ良い大人が増えているのではないでしょうか。

 

人口が減って、空き家が増えているのに、家が建ち続けて窮屈です。もう20年以上前の話ですが、僕が小さいころ遊んでいた公園の隣に家が建ちました。僕らはそこで野球をするのが好きだったのですが、あるときボールが家の壁にぶつかって、ものすごくその家のおばさんに怒鳴られました。以来ボール遊びはなし。数年前、母校の小学校で毎年芋ほりに使っていた畑は家になりました。今もどんどん、子供が走り回って遊べる環境がなくなっていっていると思います。

 

日本では妊婦さんも生きづらさを感じているのではないでしょうか。日本の女性の多くが他人から攻撃されることを恐れて『お腹に赤ちゃんがいます』のマタニティーマークを付けていないという報道を見ました。そのマークが幸せそうで気に食わない、ムカつく、妊娠できない人に配慮していない、デザインを変えろという人がいるとも耳にしました。いいじゃないか、他人が幸せそうだって、、、

うちの奥さんはお腹が大きくなると、街行く人に「あら、いま何ヶ月?」「いつ生まれるの?」と、しょっちゅう声をかけられていました。ベイビーシャワーというイベントで友人たちが祝福してくれて、ベイビー用品をプレゼントしてもらいました。彼女は、両親と遠くて大変だったけれど、アメリカで産んでいいこともいっぱいあったと言ってくれました。

 

日本人は、周囲の人間に守られているという安心感や、子供が感性を発揮できる遊び場が失われ、親世代が子育てにポジティブなイメージを持ちにくくなっているのではないでしょうか。僕ら日本人はよく、お金を渡せば問題が解決出来ると思いがちですが、子供を持ちたいという欲求は、月々1万円ちょっとの給付金で湧いて出てくるものではなく、もっと日々の生活に根ざした深いところから湧いてくるのではないかと思います。それがいったい何なのか、皆で手を取り合って探していくことが必要なのだと思います。