アメリカ研究子育てマンの観察日記

アメリカで研究と子育てに奔走する男の観察日記。独自の視点でアメリカを見つめ、日本を見つめ直す

セリーナ・ウィリアムズの性差別という主張は成立するのか?

引き続きテニスUS Openの話題です。

 

もう皆さんご存知かもしれませんが、大坂なおみの優勝試合がセリーナ・ウィリアムズの発言によって性差別問題に発展しました。どういうことかと言いますと、セリーナが3度目のペナルティーを取られ、これがゲーム・ペナルティーとなりました。これを受けて、セリーナは「男子の選手でこんな重い反則受けた人いる?私が女性だからだ!性差別だ!」とコート内外で主張しました。記者会見では、「私は女性の人権のために戦っている!」と強い口調で言っていました。今回はこの主張が成立するのか検証してみたいと思います。

 

セリーナの反則をおさらい

セリーナは計3回の反則を行いました。1回目はコーチから指示を受ける違反。2回目はラケットを地面に叩きつけて破壊する違反。3回目は審判を「嘘つき、盗っ人」などと侮辱する発言を行ったことによる違反。今回初めて知りましたが、反則1回目は警告、2回目はポイント・ペナルティー、3回目はゲーム・ペナルティー、4回目は失格(負け)というルールがあります。

テニスのゲームペナルティは何?セリーナが受けた理由は?(全米OP) | 興味がありあまる

つまり審判は基準に従って、3回目なのでゲーム・ペナルティーにしただけなのです。ということは問題は、3回それぞれの反則が妥当かどうかということが問題になります。

 

セリーナ支持派の主張

恐ろしいことですが、アメリカのメディアは大抵がセリーナ支持派に回っている印象です。アメリカ大手メディアは右派左派関係なく笑ってしまうほど同じ論法で今回の問題を解説しています。この動画はそのひとつです。

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①コーチの指示を受けるのは誰でもやっている。なのに彼女だけがペナルティーをもらうのはおかしい。審判は気付いたのだったら、警告を与える前にもう少し柔らかく口頭で注意するべきだった。っていうかコーチがコーチできないテニスって何よ、笑。

②ラケットを壊したのは確かに違反だ、そして彼女の振る舞いも良くなかった。

③でも審判を侮辱する発言は男子だったら誰でもしている。彼女だけペナルティーをもらうのはおかしい。

④審判はセリーナが(黒人)女性だから反則を取ったとしか思えない。テニス界にも性差別が存在するのだ。

⑤そして忘れてはいけませんね、若き大坂なおみは素晴らしいプレーをしました。

 

だいたいこんな流れです。知り合いの女性とこの問題について話したのですが、試合は観ていないと前置きした上で、「新聞を見た限り、彼女が怒るには理由がある感じがした。」と言っていました。

 

 

カルロス・ラモス主審の判定に女性差別的なバイアスが存在するのか

ラケットの破壊はもう議論の余地はありません。問題なのは、1回目のコーチング、3回目の審判への侮辱が反則に値するか、です。

 

1回目 コーチングに対するペナルティー:実は最も多い反則

まず、1回目のペナルティー:コーチから指示を受けたことによる反則から。この判定に頭がきたセリーナは感情のコントロールを失います。故にこれが2回目、3回目の違反に繋がったと言っても過言ではありません。このコーチングによる反則を受けたセリーナは「自分はコーチングは受けていない!私には娘がいるんだ!ズルなんてしたことない!私に謝れ」と激しく主審に迫ります。しかし、何と試合後にコーチ自身が手で指示を送ってことを認めてしまったのです。そして、その言い訳が例の「みんなやっている」でした。以上から、判定は妥当であると言えます。

 

セリーナ側は「コーチングは誰でもやっている。私が女性だから反則を課された」と言っていますが、これはデータ見る限り正しくありません。US オープン以前に行われた3つのグランドスラム(フレンチ、ウィンブルドン、オーストラリア)であった反則の合計は女子で31あったようです。そのうち11個がコーチングに関連したものでした。コーチングが全反則の1/3を占める割合であり、最も多いのです。男性と女性を比較したデータではないですが、コーチングを見つけたら罰則を科すことが多いので、セリーナの件が特殊でもなんでもないことがわかります。

 

3回目 審判への侮辱:ラモス主審は男性にも同じように反則を与えていた

3回目の反則は動画見てもらえれば分かりますが、「謝れ、嘘つき」など罵声を浴びせかけつづけて、最後には「あんたは私からポイントを奪った、盗っ人め!」と言い放ちました。これは間違えなく審判に対する侮辱なので、判定自体は文句無しで妥当でしょう。

 

では、ラモス主審は男性選手だったら与えないペナルティーをセリーナに与えたのでしょうか?それを考えるためにはラモス主審が過去に与えたペナルティーをみる必要があります。

・2016年オリピック アンディー・マレーに主審を侮辱したとしてペナルティーを与えた。

・2017年フレインチオープン ラファエル・ナダルが時間を使い過ぎでいるとしてペナルティーを与えた。

・2018年ウインブルドン ノバク・ジョコビッチがラケットを地面に投げてペナルティーを与えた。

以上から、ラモス主審は大きな大会で男性のトッププレーヤーも同じように反則を課していたことがわかります。

 

テニス界全体で女性差別的な判定があるのか?

US オープン以前に行われた3つのグランドスラム(フレンチ、ウィンブルドン、オーストラリア)であった反則の合計は女子で31回に対して、男性は倍近い59回です。どうも、女性だからと言って反則をもらいやすいという主張は成り立たないと思われます。

 

もう少し書きたいことがありましたが、力尽きたのでまた次回。

以下、参考記事です。

 

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www.usatoday.com