アメリカ研究子育てマンの観察日記

アメリカで研究と子育てに奔走する男の観察日記。独自の視点でアメリカを見つめ、日本を見つめ直す

大坂なおみの涙と記者会見が語るチャンピオンに相応しい人間性

ブログのタイトルに反して子供のこと全然書いてない、、、近いうちに、、、

 

さて、大坂なおみさんが優勝しました。日本人で初優勝はすばらしいのですが、僕は彼女が日本人だから、ということ以上に彼女の人間性のすばらしさに心を打たれました。

 

なぜブーイングが起きたのか

ネットを騒がせていますが、表彰式で大ブーイングが起こって大坂選手が涙しています。ブーイングが起こって涙したところだけ切り取ると、アメリカのお客さんが日本人である大阪選手が勝利したことが気に入らず、ブーイングして、それが悲しくて泣いたようにみえます。ネットではけしからん!という声も多いようです。ただ、それは事実のほんの一部でしかなく、ここで起きたことは実際にはもっと複雑です。以下、表彰式の一部始終が記録された動画です。


[FULL] 2018 US Open trophy ceremony with Serena Williams and Naomi Osaka | ESPN

 

初めお客さん達はブーイングを起こしますが、セリーナが「彼女は(大坂選手)良いプレーをした、彼女の初めてのグランドスラムなのよ」というと会場から大歓声が起こります。このことから、ブーイングの対象が大阪選手でないことがわかります。お客さんは審判を含めた大会運営側に憤って、むしゃくしゃしていたのです。

 

グッド・ゲームが作れなくて泣けた

ネットで「これは喜びの涙なのでは?」という意見もありましたが、僕は悲しみの涙たと思います。セリーナも記者会見で「彼女は喜びの涙ではなく、悲しみの涙を流した」と語っていました。

では、大坂選手にとって何が一番悲しかったのか?それはお客さんに「見に来てよかった!」と思ってもらえる良いゲームが作れなかったこと、と僕は考えます。実際、試合はセリーナが怒り狂い、グッド・ゲームからは程遠いものでした。きっかけは、セリーナがコーチからアドバイスを受けたとして、反則が与えられポイントを失ったことでした。


2018 US Open Highlights: Serena Williams' dispute overshadows Naomi Osaka's final win | ESPN

セリーナは誤解であるとして、猛反発。彼女は感情がコントロールできず、ラケットを破壊。更に、審判に対して執拗に「謝れ!」「私の人間性に対して攻撃している」「私に話しかけるな!」挙句の果てに「私からポイントを奪った、あんたは泥棒だ!」とまくし立て、ゲーム・ペナルティーを受けて、ゲームを失ってしまします。

 

両選手は何が起きたかわからず、混乱して試合が中断。会場からはブーイングが起こる。その後、セリーナが抗議し続けて、たびたび試合が中断。セリーナは泣き出す。こんな混沌の中、大坂選手が勝利します。こんな展開はみたことがないと、解説者も戸惑うような内容でした。

 

こんな内容でお客さんは喜べないでしょう。むしろ、多くの人が「自分が応援するセリーナがフェアにプレーできる環境ではなかったのではないか」と憤っていたのだと思います。そして、あの表彰式に繋がります。大坂選手は大荒れの試合の中で、心が最大限まで張り詰めていたはずです。そんな中でブーイングを聞けば泣いてしまうのも無理はありません。

 

チャンピオンに相応しい人間性

表彰式で、彼女が非常に謙虚で、お客さんと対戦相手であるセリーナに軽くお辞儀をしながら感謝を述べているシーンにグッと来ました。彼女は父親がハイチ出身、母親が日本出身、アメリカで生まれ育つという複雑なバックグラウンドの持ち主ですが、お辞儀を含めた謙虚な佇まいからは日本人が美徳とするものを、僕は感じ取りました。最初はブーイングしていたお客さんたちも、きっと彼女が好きになったでしょう。

 

場所は記者会見に移ります。大坂選手はここでもセリーナを批判することは一切ありませんでした。


2018 US Open Press Conference: Naomi Osaka

彼女には試合中荒れ狂ったセリーナに関連した質問が複数ありました。それに対して、「歓声がうるさくて気づかなかった、自分は試合に集中するだけだった。」という回答を貫きます。でも、セリーナが怒ってる動画を見てもらえればわかるんですが、そんなはずはありません。確かに、ゲーム・ペナルティーのときは混乱しているようでしたが、会場が異様な空気に包まれていたので、わかるはずです。現に、会見の終盤には「いろいろあったけど謝罪が必要だと思いますか?」という質問には思わず感情的になって涙してしまっています。彼女はセリーナをリスペクトしており、セリーナに対して良くないことを掘り出せれる可能性がある質問には、明確な回答を避けたのだと思いました。

 

また、今日セリーナはあんな感じでしたけど、今でも変わらずあなたのアイドルですか?という質問に、「何も変わりません。」と答えています。対戦相手を思いやる気持ち、これぞ真のスポーツマンシップ、、、素敵です!

 

大坂選手のこれからの活躍を期待しています!