アメリカ研究子育てマンの観察日記

アメリカで研究と子育てに奔走する男の観察日記。独自の視点でアメリカを見つめ、日本を見つめ直す

アメリカの教育の機会不平等性がもたらす末路

もうかれこれ15年くらい前の話だと思いますが、ケーブルテレビでMTVを見ていました。そこで面白い番組があって、人気の黒人ラッパーがサプライズで高校に乗り込み、パフォーマンスをするというものでした。日本でも卒業式にアーティストがサプライズで登場!何て番組があるので、どこでも似たもんがあるんだなぁっと思っていたのですが、そこで「おやっ?」と思いました。生徒が全員黒人だったのです。アメリカは人種が多様なはずなのにどうして?と思いましたが、アメリカに来てなるほどっと思いました。

 

アメリカでは人種によってはっきりと住み分けができています。もちろん白人が裕福な地区に、黒人が貧しい地区に住んでいます。僕の住むミネソタ州セントポール市でも、「なんじゃこりゃ!!!」って思わず驚いてしまうデカイお屋敷が並ぶ通りの通りから、1,2 Km行くとかなり貧しい通りがあり、そこでもはっきり人種がはっきりと分かれます。割と狭い範囲でこれほどはっきり分かれているのは興味深いです。僕はバスで通勤しているのですが、黒人がよく降りるバス停とそうでないバス停がはっきり分かれています。そりゃ住んでる場所が違うんだから、使うバス停も別れるわな、、、と勝手に納得しています。

 

なぜこれほどまでに分断が進んでしまったのか、アメリカの学校運営のシステムがその要因の一つだと思います。ある日知り合いのインド人の夫婦が、裕福な地区に引っ越しました。引っ越しをした一番の理由は「子供を良い学校に入れたい!」という理由のようでした。信じられないことですが、アメリカでは地区単位で学校の運営が任されています。つまり、その地区の税収によって教育水準が大きく左右されることになります。たとえ同じ州であっても貧しい地区では貧相な学校設備・教育になり、逆に裕福な地区ではより良い設備・教育が提供されることになります。この動画が参考になります。

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そのため、貧しい地区の人間は教育水準が低くなり、貧しさから抜け出せなくなります。逆に裕福な地区の人間には、子供のことを考えると裕福な地域に留まるというインセンティブが生じます。こうしてドンドン格差が広がっていきます。

 

これは問題であるのでアメリカでは大学入試でアファーマティブアクションが取られます。うちの大学でも白人以外のマイノリティの入学枠が確保されていると聞いたことがあります。しかし、そんなものでは当然格差を根本的に解決できるのもではありません。

 

これまで人種間のギャップについて話してきましたが、最近は白人も転落側に陥ってしまい、抜け出せなくなっている人が大勢いるのでしょう。アメリカという国の強さは、トクヴィルが昔言ったように、分厚い中間層であったはずですが、このように格差製造兵器と化した社会システムでは、誇るべき民主制はトランプのようなポプュリズムを得意とする人間を代表者に選び出し、逆に足かせになってしまうでしょう。